(心臓が止まるほどの)ドキドキとハラハラ

(心臓が止まるほどの)ドキドキとハラハラ

今、UK発の青春ボーイズロマンスコミック「HEARTSTOPPER」に夢中です。Netflixでの映像化が決定!というニュースでこの作品を知り読み始めたのだが(その名の通り)ページをめくる度に激しいキュン!とギュン!に交互に襲われ心臓が止まりそうになる。

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イギリスの男子高に通う二人の男の子の恋愛と成長を描いたお話なのだが、とにかく描写が丁寧なのだ。学校で唯一ゲイであることをオープンにしているチャーリー(ちょいと影あり系ナード)とラグビー部で人気者のニック(快活スポーツマン)が出会い互いに惹かれ合っていく。コミックだからと夢の様なドキドキばかりにフォーカスせず、二人が関係を進める上で直面する、現実的でハラハラする問題がきちんと描かれるところが素晴らしい。セクシュアリティの揺らぎ、親へのカミングアウト。クラスメイトの誰にアウトして、誰にしないべきなのか。自己許容と自分の存在を否定する他人との出会い。

好きなシーンがある。二人が付き合い始めた時に、チャーリーがある事情から親友のタオにその事実を伝えられず、隠し事をしている状態に罪悪感を感じて辛くなってしまう。そんな時に彼の友人がチャーリーにかける言葉。「これはタオの問題ではなく、あなたとニックの問題。だからあなたが全部を決めていいんだよ。ゲイである後ろめたさから、まるで友達や家族に借りがあるように感じてしまい、全てを伝えるべきだと思い込んでしまうこともあるけど、そんなことないよ。全部あなたがコントロールしていいんだよ。(私の超拙訳です許してください)」これはまさに学生時代の自分にかけてあげたい言葉だった。大切な人に大事なことをオープンにしないことで彼らを欺いている感覚があり、それに罪悪感を感じる。ストレートの人はストレートであることをオープンにする必要はないけれど、ゲイである自分はオープンにしないと、彼らと同じラインに立てない気がして、対等な信頼関係を築くことが出来ない気がして、義務感に駆られる。本当はそんな義務感は必要ないのに、だって全部自分のことだから。

ああ!今すぐタイムマシンに乗って悩んでいる17歳の自分の部屋に行き、机の上にHEARTSTOPPERを3冊置いていきたい気分です。10代や、LGBTQ当事者だけでなく、自己のアイデンティティを模索するすべての人たちを勇気づけることのできる本当に素敵な作品です。

もうひとつ、この作品の大きな魅力に、実際の音楽を上手に演出に活用しているということがある。コミックの最後のページに作品に関わる楽曲を記載したりしていて、それを聞きながら読むとより没入出来ます。作者が丁寧にSpotifyでプレイリストにして発表してるので聞いてみてね。